ものが、射落《いお》とされたのを見《み》て、舌《した》をまいておじおそれました。そして為朝《ためとも》を神《かみ》さまのように敬《うやま》いました。
 為朝《ためとも》は鬼《おに》ガ島《しま》を平《たい》らげたついでに、ずんずん船《ふね》をこぎすすめて、やがて伊豆《いず》の島々《しまじま》を残《のこ》らず自分《じぶん》の領分《りょうぶん》にしてしまいました。そして鬼《おに》ガ島《しま》から大男《おおおとこ》を一人《ひとり》つれて、大島《おおしま》へ帰《かえ》って来《き》ました。
 大島《おおしま》の者《もの》は、為朝《ためとも》が小船《こぶね》に乗《の》って出たなり未《いま》だに帰《かえ》って来《こ》ないので、どうしたのかと思《おも》っていますと、ある日《ひ》恐《おそ》ろしい鬼《おに》をつれてひょっこり帰《かえ》って来《き》たので、みんなびっくりしてしまいました。

     六

 こうして為朝《ためとも》は十|年《ねん》たたないうちに、たくさんの島《しま》を討《う》ち従《したが》えて、海《うみ》の王《おう》さまのような勢《いきお》いになりました。すると為朝《ためとも》のために大島《
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