つもりで、まずおとがめをうけて押《お》しこめられている六条判官為義《ろくじょうほうがんためよし》の罪《つみ》をゆるして、味方《みかた》の大将軍《たいしょうぐん》になさいました。為義《ためよし》はもう七十の上を出た年寄《としよ》り[#「年寄《としよ》り」は底本では「年寄《としより》り」]のことでもあり、天子《てんし》さま同士《どうし》のお争《あらそ》いでは、どちらのお身方《みかた》をしてもぐあいが悪《わる》いと思《おも》って、
「わたくしはこのまま引《ひ》き籠《こも》っていとうございます。」
 といって、はじめはお断《ことわ》りを申《もう》し上《あ》げたのですが、どうしてもお聞《き》き入《い》れにならないので、しかたなしに長男《ちょうなん》の義朝《よしとも》をのけた外《ほか》の子供《こども》たちを残《のこ》らず連《つ》れて、新院《しんいん》の御所《ごしょ》に上《あ》がることになりました。
 そういうさわぎの中に為朝《ためとも》がひょっこり帰《かえ》って来《き》たのです。為義《ためよし》ももう昔《むかし》のように為朝《ためとも》をしかっているひまはありません。大《おお》よろこびで、さっそく
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