、何《なに》かにつけて、
「これをしろ、ちょんさん。あれをしろ、ちょんさん。」
 と、ちょんさんばかりひどく使《つか》いました。いたずらをしても、
「これ、ちょんさん、ここへ来《こ》い。ごつん。」
 とすぐやられますが、弟《おとうと》の方《ほう》は、「まんまる入道《にゅうどう》、ひら入道《にゅうどう》、せいたか入道《にゅうどう》、へいがのこ、いっちょうぎりの、ちょうぎりの。」をやっているうちに、くたびれてしまって、おとうさんも小言《こごと》をいうのが、めんどうくさくなりました。
 おかあさんは、「やはりあの子に長《なが》い名《な》をつけて、いいことをした。」と思《おも》いました。

     三

 ある日ちょんさんは、お友達《ともだち》といっしょに裏《うら》で遊《あそ》んでいました。するうち、どうかしたはずみで、ちょんさんは井戸《いど》に落《お》ちました。
「ちょんさんや、ちょんさんや。ちょんさんやい。」
 みんなは口々《くちぐち》にこう名前《なまえ》を呼《よ》んで、縄《なわ》を下《お》ろしたり、はしごをかけたりして、やっとちょんさんを助《たす》け出《だ》しました。
 おかあさんは、
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