忠義な犬
楠山正雄
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)陸奥国《むつのくに》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)一|本《ぽん》
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一
むかし陸奥国《むつのくに》に、一人《ひとり》のりょうしがありました。毎日《まいにち》犬《いぬ》を連《つ》れて山の中に入《はい》って、猪《いのしし》や鹿《しか》を追《お》い出《だ》しては、犬《いぬ》にかませて捕《と》って来《き》て、その皮《かわ》をはいだり、肉《にく》を切《き》って売《う》ったりして、朝晩《あさばん》の暮《く》らしを立《た》てていました。
ある日りょうしはいつものように犬《いぬ》を連《つ》れて山に行きましたが、どういうものか、その日は獲物《えもの》が一向《いっこう》にありません。そこで心《こころ》をいらだたせながら、ついうかうか、獲物《えもの》を探《さが》していくうちに、だんだん奥《おく》へ、奥《おく》へと入《はい》っていって、そのうちにとっぷり日が暮《く》れてしまいました。
こう山奥《やまおく》深《ふか》く入《はい》っては、もう今更《いまさら》引《ひ》っ返《かえ》して、
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