た。りょうしはびっくりして、思《おも》わず犬《いぬ》をつき放《はな》して、振《ふ》り上《あ》げていた刀《かたな》で、犬《いぬ》の首《くび》を切《き》り落《お》としてしまいました。山の中があんまり寂《さび》しいので、気《き》が変《へん》になって、犬《いぬ》が狂《くる》い出《だ》したのだと、りょうしは思《おも》ったのでしょう。
 ところが驚《おどろ》いたことには、切《き》られた犬《いぬ》の首《くび》は、いきなり飛《と》び上《あ》がって、りょうしの眠《ねむ》っていた頭《あたま》の上の木の枝《えだ》にかみつきました。すると暗《くら》やみの中から、うう、うう、とうなるようなものすごい声《こえ》が聞《き》こえました。やがてばっさりと、まるで大木《たいぼく》でも倒《たお》れたような音《おと》がして、何《なに》か上から大きなものが落《お》ちてきました。りょうしは驚《おどろ》いて、火《ひ》をともしてよく見《み》ますと、四五|間《けん》もありそうな長《なが》さのおそろしい大蛇《おろち》が、とぐろを巻《ま》いたまま落《お》ちてきたのでした。そののどに犬《いぬ》の首《くび》がしっかりとかみついていました。木の
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