た。けれども兜《かぶと》の前立《まえだて》のきらきらする星《ほし》の光《ひかり》におじけて、ただ口から火を吹《ふ》くばかりで、そばへ近寄《ちかよ》ることができません。そのうち頼光《らいこう》に二三|度《ど》つづけて切《き》りつけられて、首《くび》はどんと下におちてしまいました。
 手下《てした》の鬼《おに》どもは、しばらくの間《あいだ》はてんでんに鉄棒《てつぼう》をふるって、打《う》ちかかってきましたが、六|人《にん》の武士《ぶし》に片端《かたはし》から切《き》り立《た》てられて、みんな殺《ころ》されてしまいました。
 鬼《おに》が大《おお》ぜいつかまえておいた娘《むすめ》たちの中には、池田《いけだ》の中納言《ちゅうなごん》のお姫《ひめ》さまも交《ま》じっていました。頼光《らいこう》は鬼《おに》のかすめた宝物《たからもの》といっしょに娘《むすめ》たちをつれて、めでたく都《みやこ》へ帰《かえ》りました。天子《てんし》さまはたいそうおよろこびになって、頼光《らいこう》はじめ保昌《ほうしょう》や四|天王《てんのう》たちにたくさん御褒美《ごほうび》を下《くだ》さいました。そしてそれからは鬼《お
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