ていただきとうございます。」
 と、さも心細《こころぼそ》そうにいいました。
 鬼《おに》どもは、
「これは珍《めずら》しい者《もの》がやって来《き》たぞ。なにしろ大王様《だいおうさま》に申《もう》し上《あ》げよう。」
 といって、酒呑童子《しゅてんどうじ》の所《ところ》へ行ってしらせますと、
「それはおもしろい。すぐ奥《おく》へとおせ。」
 といいました。
 六|人《にん》の武士《ぶし》が縁側《えんがわ》に上《あ》がって待《ま》っていますと、やがて雷《かみなり》や稲光《いなびかり》がしきりに起《お》こって、大風《おおかぜ》のうなるような音《おと》がしはじめました。すると間《ま》もなくそこへ、一|丈《じょう》にもあまろうという大きな赤鬼《あかおに》が、髪《かみ》の毛《け》を逆立《さかだ》てて、お皿《さら》のような目をぎょろぎょろさせながら出《で》て来《き》ました。その姿《すがた》を一目《ひとめ》見《み》ただけで、だれだっておどろいて気《き》を失《うしな》わずにはいられません。けれども頼光《らいこう》はじめ六|人《にん》の武士《ぶし》はびくともしないで、酒呑童子《しゅてんどうじ》の顔《か
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