大江山
楠山正雄
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)源頼光《みなもとのらいこう》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)四|人《にん》の
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一
むかし源頼光《みなもとのらいこう》という大将《たいしょう》がありました。その家来《けらい》に渡辺綱《わたなべのつな》、卜部季武《うらべのすえたけ》、碓井貞光《うすいのさだみつ》、坂田公時《さかたのきんとき》という四|人《にん》の強《つよ》い武士《ぶし》がいました。これが名高《なだか》い、「頼光《らいこう》の四|天王《てんのう》」でございます。
そのころ丹波《たんば》の大江山《おおえやま》に、酒呑童子《しゅてんどうじ》と呼《よ》ばれた恐《おそ》ろしい鬼《おに》が住《す》んでいて、毎日《まいにち》のように都《みやこ》の町《まち》へ出て来《き》ては、方々《ほうぼう》の家《いえ》の子供《こども》をさらって行きました。そしてさんざん自分《じぶん》のそばにおいて使《つか》って、用《よう》がなくなると食《た》べてしまいました。
するとある時《とき》、池田中納言《いけだのちゅうなごん》という人の一人《ひとり》きりのお姫《ひめ》さまが急《きゅう》に見《み》えなくなりました。中納言《ちゅうなごん》も奥方《おくがた》もびっくりして、死《し》ぬほど悲《かな》しがって、上手《じょうず》な占《うらな》い者《しゃ》にたのんでみてもらいますと、やはり大江山《おおえやま》の鬼《おに》に取《と》られたということがわかりました。
中納言《ちゅうなごん》はさっそく天子《てんし》さまの御所《ごしょ》へ上《あ》がって、大事《だいじ》な娘《むすめ》が大江山《おおえやま》の鬼《おに》に取《と》られたことをくわしく申《もう》し上《あ》げて、どうぞ一|日《にち》もはやく鬼《おに》を退治《たいじ》して、世間《せけん》の親《おや》たちの難儀《なんぎ》をお救《すく》い下《くだ》さるようにとお願《ねが》い申《もう》し上《あ》げました。
天子《てんし》さまはたいそう気《き》の毒《どく》に思《おぼ》し召《め》して、
「だれか武士《ぶし》のうちに大江山《おおえやま》の鬼《おに》を退治《たいじ》するものはないか。」
と大臣《だいじん》におたずねになりました。すると大臣《だいじん》は、
「それは源氏《げんじ》の大将《たい
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