どうじ》を退治《たいじ》するために、京都《きょうと》からお下《くだ》りになった方々《かたがた》でしょう。さあ、これからわたくしどもがこの山の御案内《ごあんない》をいたしますから、どうぞあの鬼《おに》を退治《たいじ》して、わたくしどもの敵《かたき》をいっしょに討《う》っていただきとうございます。」
といいました。
頼光《らいこう》はそれを聞《き》いてやっと安心《あんしん》しました。そしてしばらく小屋《こや》の中に入《はい》って足の疲《つか》れをやすめました。その時《とき》三|人《にん》のおじいさんは、
「あの鬼《おに》はたいそうお酒《さけ》が好《す》きで、名前《なまえ》まで酒呑童子《しゅてんどうじ》といっております。好物《こうぶつ》のお酒《さけ》を飲《の》んで、酔《よ》い倒《たお》れますと、もう体《からだ》が利《き》かなくなって、化《ば》けることも、にげることもできなくなります。わたくしどものこのお酒《さけ》は、「神《かみ》の方便《ほうべん》鬼《おに》の毒酒《どくざけ》」という不思議《ふしぎ》なお酒《さけ》で、人間《にんげん》が飲《の》めば体《からだ》が軽《かる》くなって力《ちから》がましますが、鬼《おに》が飲《の》めば体《からだ》がしびれて、通力《つうりき》がなくなってしまって、切《き》られても、つかれても、どうすることもできません。このお酒《さけ》をあげますから、酒呑童子《しゅてんどうじ》にすすめて酔《よ》いつぶした上、首尾《しゅび》よく鬼《おに》の首《くび》を切《き》って下《くだ》さい。」
といって、お酒《さけ》のかめをわたしました。
それから三|人《にん》のおじいさんは先《さき》に立《た》って、千丈《せんじょう》ガ岳《たけ》を上《のぼ》って行きました。十|丈《じょう》くらい長《なが》さのある、まっくらな岩穴《いわあな》の中をくぐって外《そと》へ出ますと、さあさあと音《おと》を立《た》てて、小《ちい》さな谷川《たにがわ》の流《なが》れている所《ところ》へ出ました。その時《とき》おじいさんたちはふり向《む》いて、
「ではこの川についてどんどん上《のぼ》っておいでなさい。すると川のふちに十七八の娘《むすめ》がいますから、その子にたずねて、鬼《おに》の岩屋《いわや》へおいでなさい。」
といったと思《おも》うと、三|人《にん》ともふいと姿《すがた》が見《み》え
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