ょう》、次《つぎ》は綱《つな》と、かわるがわる次《つぎ》から次《つぎ》へ杯《さかずき》をまわして、おしまいに酒呑童子《しゅてんどうじ》に返《かえ》しました。
「酒《さけ》ばかりではさびしい。さかなも食《く》え。」
 酒呑童子《しゅてんどうじ》はこういって、こんどは生《な》ま生《な》ましい人間《にんげん》の肉《にく》を出《だ》しました。頼光《らいこう》たちはその肉《にく》を切《き》って、さもうまそうに舌鼓《したつづみ》をうちながら食《た》べました。酒呑童子《しゅてんどうじ》は頼光《らいこう》たちが悪《わる》びれもしないで、生《い》き血《ち》のお酒《さけ》でも、生《な》ま肉《にく》のおさかなでも、引《ひ》き受《う》けてくれたので、見《み》るから上機嫌《じょうきげん》になって、
「こんどはお前《まえ》たちの持《も》って来《き》た酒《さけ》のごちそうになろうじゃないか。」
 といいました。頼光《らいこう》はさっそく綱《つな》にいいつけて、さっき神様《かみさま》から頂《いただ》いた「神《かみ》の方便《ほうべん》鬼《おに》の毒酒《どくざけ》」を出《だ》して、酒呑童子《しゅてんどうじ》の大杯《おおさかずき》になみなみとつぎました。酒呑童子《しゅてんどうじ》は一息《ひといき》に飲《の》みほして、これもさもうまそうに舌鼓《したつづみ》をうちながら、
「これはうまい酒《さけ》だ。もう一ぱいくれ。」
 と杯《さかずき》を出《だ》しました。頼光《らいこう》は心《こころ》の中ではしめたと思《おも》いながら、うわべは何気《なにげ》ない顔《かお》をして、
「どうもお口にかなって満足《まんぞく》です。それではお酒《さけ》だけではおさびしいでしょうから、こんどはおさかなをいたしましょう。」
 といって、立《た》ち上《あ》がって、扇《おうぎ》をつかいながら舞《ま》いを舞《ま》いました。四|天王《てんのう》は声《こえ》を合《あ》わせて拍子《ひょうし》をとりながら、節《ふし》おもしろく歌《うた》を歌《うた》いました。
 それを見《み》ると、酒呑童子《しゅてんどうじ》も、手下《てした》の鬼《おに》たちも、おもしろそうに笑《わら》いながら、すすめられるままに、「神《かみ》の方便《ほうべん》鬼《おに》の毒酒《どくざけ》」をぐいぐい引《ひ》き受《う》けて、いくらでも飲《の》みました。そのうちにだんだんお酒《さけ》
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