迷《まよ》った旅《たび》の修行者《しゅぎょうじゃ》でございますが、三|人《にん》のうち二人《ふたり》まで仲間《なかま》をなくしてしまいました。」
 といって、今《いま》し方《がた》出会《であ》ったふしぎな出来《でき》ごとを残《のこ》らず話《はな》しました。すると女は大《たい》そう気《き》の毒《どく》がって、
「じつはわたしも鬼《おに》の娘《むすめ》です。永年《ながねん》あなたと同《おな》じような気《き》の毒《どく》なめにあった人を見《み》て知《し》っています。けれどもそれをどうして上《あ》げることもできませんでした。でもあなたはお気《き》の毒《どく》な人だから、助《たす》けて上《あ》げたいと思《おも》います。もう間《ま》もなく鬼《おに》がここまで追《お》っかけて来《く》るに違《ちが》いありませんから、少《すこ》しでも早《はや》く逃《に》げておいでなさい。これから一|里《り》ばかり行くと、わたしの妹《いもうと》がいます。そこへわたしから手紙《てがみ》をつけて上《あ》げます。」
 といって、手紙《てがみ》を書《か》いてくれました。
 坊《ぼう》さんは度々《たびたび》お礼《れい》をいって、手
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