紙《てがみ》をもらって、また足《あし》にまかせて駆《か》けて行きました。なるほど一|里《り》ばかり行くと、松《まつ》のはえた山があって、その山の陰《かげ》に家《うち》がありました。そこへ入《はい》って、手紙《てがみ》を見《み》せますと、若《わか》い女が出て来《き》て、
「お気《き》の毒《どく》だから助《たす》けて上《あ》げたいと思《おも》いますが、あいにく今《いま》は悪《わる》い時刻《じこく》です。」
といって、ふしぎそうな顔《かお》をしている坊《ぼう》さんを、いきなり戸棚《とだな》の中にかくしてしまいました。しばらくすると、どこからか血《ち》なまぐさい風《かぜ》が吹《ふ》いてきて、がやがや人の声《こえ》がしました。やがて入《はい》って来《き》たのは、これも恐《おそろ》しい顔《かお》をした鬼《おに》でした。そしてもう入《はい》って来《く》るなり鼻《はな》をくんくんやりながら、
「ふんふん、人くさいぞ。人くさいぞ。」
とわめきました。
「ばかなことをいってはいけません。きっとけだものくさいの間違《まちが》いでしょう。」
と女はいって、牛《うし》や馬《うま》の生々《なまなま》しい肉《
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