って食《た》べる音《おと》がしました。なかなか大食《おおぐ》いだとみえて、さんざん食《た》べたり、飲《の》んだりして、こんどはおなかがくちくなると、鬼《おに》は二人《ふたり》とも、ぐうぐう高《たか》いびきをかいて寝込《ねこ》んでしまいました。
鬼共《おにども》のいびきの音《おと》を聞《き》くと、坊《ぼう》さんはほっと息《いき》をつきながら、今《いま》のうちに逃《に》げ出《だ》そうと思《おも》って、もう真《ま》っ暗《くら》になった山道《やまみち》をやたらに駆《か》けていきました。やがて向《む》こうのこんもり木の茂《しげ》った中からぽつんと一つ明《あか》りが見《み》えて、家《うち》がそこにありました。こんどもまた鬼《おに》の住《すま》いではないかと、気味悪《きみわる》く思《おも》って、そっと前《まえ》を通《とお》り抜《ぬ》けて駆《か》けていきますと、うしろから、
「もしもし、どこへ行くのです。」
とやさしい女の声《こえ》で声《こえ》をかけられました。坊《ぼう》さんはぎょっとしながら、振《ふ》り返《かえ》ってみますと、若《わか》い女でしたから、やっと安心《あんしん》して、
「道《みち》に
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