体《はだか》の上をまた五十たび打《う》ちました。すっかりでちょうど百たび打《う》った時《とき》、もうだんだん虫《むし》の鳴《な》くような声《こえ》でそれでもひいひいいっていた坊《ぼう》さんは、急《きゅう》に一声《ひとこえ》高《たか》く「ひひん。」と、馬《うま》のいななくような声《こえ》を出《だ》しました。その拍子《ひょうし》に顔《かお》が急《きゅう》に伸《の》びて、馬《うま》のような顔《かお》になりました。みるみる体《からだ》が馬《うま》になって、たてがみが立《た》って、しっぽがはえて、手足《てあし》を地《じ》びたにつけて、ひょいと立《た》ちますと、もうそれはりっぱな四|本《ほん》の足《あし》になって、砂《すな》をけっていました。それはどこから見《み》てもほんとうの馬《うま》に違《ちが》いはありませんでした。
鬼《おに》の坊《ぼう》さんは、その馬《うま》にくつわをかませて綱《つな》をつけて、馬屋《うまや》へ引《ひ》いていきました。あとの二人《ふたり》は目の前《まえ》で自分《じぶん》の仲間《なかま》が馬《うま》になってしまったので、自分《じぶん》たちもいずれ同《おな》じめにあうのだろう
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