りのおじいさんの坊《ぼう》さんが出て来《き》ました。何《なん》だかこわらしい、食《く》いつきそうな顔《かお》をした坊《ぼう》さんでしたけれど、今更《いまさら》どうにもならないと思《おも》って、三|人《にん》は上へ上《あ》がりました。するとあるじの坊《ぼう》さんは、
「お前《まえ》さんたちはおなかがへったろう。」
 といって、ごちそうをお盆《ぼん》にのせて出《だ》してくれました。ごちそうは大《たい》へんうまかったし、あるじの様子《ようす》も顔《かお》に似合《にあ》わず親切《しんせつ》らしいので、三|人《にん》はすっかり安心《あんしん》して、食《た》べたり飲《の》んだりしていました。
 夕飯《ゆうはん》がすんでしまうと、あるじの坊《ぼう》さんは手をならして、
「これこれ。」
 と呼《よ》びますと、もう一人《ひとり》のやはりこわらしい顔《かお》をした坊《ぼう》さんが出て来《き》ました。
 何《なに》をいうかと思《おも》うと、
「御飯《ごはん》がすんだから、いつもの物《もの》を持《も》っておいで。」
 といいつけました。坊《ぼう》さんはうなずいて出ていきました。いったい「いつものもの」というのは何《なん》だろうと、三|人《にん》は物《もの》めずらしさが半分《はんぶん》に、気味悪《きみわる》さが半分《はんぶん》で、何《なに》が出るかと待《ま》ちうけていますと、やがてさっきの坊《ぼう》さんが、大きな馬《うま》のくつわと、太《ふと》いむちを持《も》って戻《もど》って来《き》ました。するとあるじはまた、
「それ、いつものとおりにやれ。」
 といいつけました。
「何《なに》をするのか。」と思《おも》っていますと、もう一人《ひとり》の坊《ぼう》さんは、いきなりそこに座《すわ》っている三|人《にん》のうちの一人《ひとり》をそれは軽々《かるがる》と、かごでもつるすようにつるし上《あ》げて、庭《にわ》にほうり出《だ》しました。そして持《も》って来《き》たむちでその背中《せなか》をつづけざまに五十たび打《う》ちました。坊《ぼう》さんはぶたれながら、ひいひい悲《かな》しそうな声《こえ》を立《た》てましたが、あとの二人《ふたり》はどうすることもできないので、立《た》ったり、座《すわ》ったり、気《き》をもんでばかりいました。そのうちとうとう五十たびぶってしまうと、こんどは着物《きもの》をはがして、裸
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