いくすりをのみました。すると、きゃしゃなふしぶしに、するどいもろ刄のつるぎを、きりきり突きとおされたようにかんじて、それなり気がとおくなり、死んだようになってたおれました。やがて、お日さまの光が、海の上にかがやきだしたとき、ひいさまは目がさめました。とたんに、切りさかれるような痛みをかんじました。けれど、もうそのとき、すぐ目のまえには、うつくしいわかい王子が立っていました。王子は、うるしのような黒い目でじっとひいさまをみつめていました。はっとして、ひいさまは目を伏せました。すると、あのおさかなのしっぽは、きれいになくなっていて、わかいむすめだけしかないような、それはそれはかわいらしい、まっ白な二本の足とかわっているのが、目にはいりました。でも、まるっきり、からだをおおうものがないので、ひいさまは、ふっさりとこくながい髪の毛で、それをかくしました。王子はそのとき、いったい、あなたはたれかどこから来たのかといって、たずねました。ひいさまは、王子の顔を、やさしく、でも、あくまでかなしそうに、そのこいあい色の目でみあげました。もう、口をききたくもきけないのです。そこで、王子はひいさまの手をとっ
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