手のなかで、星のようにきらきらするのみぐすりをみただけで、おじけて引っこみました、それで、苦もなく、森もぬけ、すくも[#「すくも」に傍点]田もとおって、うずまきの流れもくぐってかえりました。
そこに、おとうさまの御殿がみえました。大きな舞踏《ぶとう》の間《ま》も、もうあかりが消えていました。きっともう、みんな寝たのでしょう。けれど、ひいさまも、いまはもうおしでしたし、このまま、ながいおわかれをしようというところでしたから、おねえさまたちを、さがしにはいっていこうとはしませんでした。もう、せつなくて、胸がはりさけるようでした。そっと、花園にはいって、おねえさまたちの花壇から、めいあいに、ひとつずつ花をつみとって、御殿のほうへ、指で、もうなんべんとしれないほど、おわかれのキッスをなげたのち、くらいあい色の海をぬけて、上へ上がっていきました。
[#挿絵(fig42383_03.png)入る]
ひいさまが、王子のお城をみつけて、そこのりっぱな階段を上がっていったとき、お日さまはまだのぼっていませんでした。お月さまだけが、うつくしくさえていました。人魚のひいさまは、やきつくように、つんとつよ
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