は、船にのって海の上をとびかけることもできますし、雲よりもたかい山にのぼることもできました。人間のいる国ぐにには森も畑もあって、それは人魚の目のとどかないとおくまではてしなくひろがっていました。そこで、このひいさまの知りたいことは山ほどあっても、おねえさまたちのちからでは、そののこらずにこたえることはできません。ですから、おばあさまにうかがうことにしました。このあばあさまはさすがに、上の世界のことをずっとよく知っておいでになりました。上の世界というのは、このおばあさまが、まことにうまく、海の上の国ぐにに名づけたものでした。
「ねえ、おばあさま、人間は、水におぼれさえしなければね、」と、ひいさまはたずねました。「それはいつまででも生きられるのでしょう。あたしたち海のそこのもののようには死なないのでしょう。」
「どうしてさ。」と、おばあさまは、おっしゃいました。「人間だって、やはり死ぬのですよ。わたしたちよりも、かえって寿命《じゅみょう》はみじかいくらいです。わたしたちは三百年まで生きられます。ただ、いったん、それがおわると、それなり、水の上のあわになって、おたがいむつまじくして来たひとた
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