おとめたちのほかたれ知るものはなく、そのおとめたちも、ただごく仲のいいお友だちのあいだでその話をしただけでした。ところで、そのお友だちのうちに、ひとり、王子を知っているむすめがありました。それから、あの晩、船の上でお祝のあったこともみていました。そのむすめは、王子がどこから来たひとで、その王国がどこにあるかということまで知っていました。
「さあ、いってみましょうよ。」と、おねえさまたちは、いちばん下のちいさい妹をさそいました。そうして、おたがい腕を肩にかけて、ながい列を組んで、海の上にうき上がりました。そこは王子の御殿のあるときいた所でした。
その御殿は、クリーム色に光をもった石で建てたものでしたが、そこのいくつかある大理石の階段のうち、ひとつはすぐと海へおりるようになっていました。平屋根の上には、一だんたかく、金めっきしたりっぱな円屋根《まるやね》がそびえていました。建物のぐるりをかこむ円柱《まるばしら》のあいだに、いくつもいくつも大理石の像が、生きた人のようにならんでいました。たかい窓にはめ込んだあかるいガラスをすかすと、なかのりっぱな広間がみえました。その広間の壁には、高価な絹
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