けておいでになりました。このおかあさまは、りこうな方でしたけれど、いちだんたかい身分をほこりたさに、しっぽにつける飾りのかき[#「かき」に傍点]をごじぶんだけは十二もつけて、そのほかはどんな家柄のものでも、六つから上つけることをおゆるしになりませんでした。――そんなことをべつにすれば、たんとほめられてよい方でした。とりわけ、お孫さんにあたるひいさまたちのおせわをよくなさいました。それはみんなで六人、そろってきれいなひいさんたちでしたが、なかでもいちばん下のひいさまが、たれよりもきりょうよしで、はだはばらの花びらのようにすきとおって、きめがこまかく、目はふかいふかい海のようにまっ青でした。ただほかのひいさまたちとおなじように、足というものがなくて、そこがおさかなの尾になっていました。
 ながいまる一日、ひいさまたちは、海の底の御殿の、大広間であそびました。そとの壁からは、生きた花が咲きだしていました。大きなこはく[#「こはく」に傍点]の窓をあけると、おさかながつういとはいって来ます。それはわたしたちが窓をあけると、つばめがとび込んでくるのに似ています。ただ、おさかなは、すぐと、ひいさまた
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