ごやかに澄んでいて、海はすっかりないでいました。そこに三本マストの大きな船が横たわっていました。そよとも風がないので、一本だけに帆が上げてあって、それをとりまいて、水夫たちが、帆綱《ほづな》や帆げたに腰をおろしていました。
そのうち、音楽と唱歌の声がして来ました。やがて夕やみがせまってくると、なん百とない色がわりのランプに火がともって、それは各国の国旗が、風になびいているように見えました。人魚のひいさまは、その船室の窓の所までずんずんおよいでいきました。波にゆり上げられるたんびに、ひいさまは、水晶のようにすきとおった窓ガラスをすかして、なかをのぞくことができました。そこには、おおぜい、晴着《はれぎ》を着かざった人がいました、でも、そのなかで目立ってひとりうつくしいのは、大きな黒目をしたわかい王子でした。王子はまだ満十六歳より上にはなっていません。ちょうどきょうがおたん生日で、このとおりさかんなお祝をしているしだいでした。水夫たちは、甲板でおどっていました。そこへ、わかい王子がでてくると、なん百とない花火が打ち上げられて、これがひるまのようにかがやいたので、ひいさまはびっくりして、いっ
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