じのわるいおばあさんはたいへんおこって、かわいそうに、小さなすずめをつかまえて、むりに口をあかせながら、
「この舌《した》がそんなわるさをしたのか。」
 と言《い》って、はさみで舌《した》をちょん切《ぎ》ってしまいました。そして、
「さあ、どこへでも出ていけ。」
 と言《い》って放《はな》しました。すずめは悲《かな》しそうな声《こえ》で、「いたい、いたい。」と鳴《な》きながら、飛《と》んでいきました。
 夕方《ゆうがた》になって、おじいさんはしばを背負《せお》って、山から帰《かえ》って来《き》て、
「ああくたびれた、すずめもおなかがすいたろう。さあさあ、えさをやりましょう。」
 と言《い》い言《い》い、かごの前《まえ》へ行《い》ってみますと、中にはすずめはいませんでした。おじいさんはおどろいて、
「おばあさん、おばあさん、すずめはどこへ行ったろう。」
 と言《い》いますと、おばあさんは、
「すずめですか、あれはわたしのだいじなのりをなめたから、舌《した》を切《き》っておい出《だ》してしまいましたよ。」
 とへいきな顔《かお》をして言《い》いました。
「まあ、かわいそうに。ひどいことをす
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