はたいそうよろこんで、うちへ帰《かえ》るのも忘《わす》れていました。そのうちにだんだん暗《くら》くなってきたものですから、おじいさんは、
「今日《きょう》はお陰《かげ》で一|日《にち》おもしろかった。日の暮《く》れないうちに、どれ、おいとまとしましょう。」
と言《い》って、立《た》ちかけました。すずめは、
「まあ、こんなむさくるしいところですけれど、今夜《こんや》はここへとまっていらっしゃいましな。」
と言《い》って、みんなで引《ひ》きとめました。
「せっかくだが、おばあさんも待《ま》っているだろうから、今日《きょう》は帰《かえ》ることにしましょう。またたびたび来《き》ますよ。」
「それは残念《ざんねん》でございますこと、ではおみやげをさし上《あ》げますから、しばらくお待《ま》ち下《くだ》さいまし。」
と言《い》って、すずめは奥《おく》からつづらを二つ持《も》ってきました。そして、
「おじいさん、重《おも》いつづらに、軽《かる》いつづらです。どちらでもよろしい方《ほう》をお持《も》ち下《くだ》さい。」
と言《い》いました。
「どうもごちそうになった上、おみやげまでもらってはすまないが、せっかくだからもらって帰《かえ》りましょう。だがわたしは年《とし》をとっているし、道《みち》も遠《とお》いから、軽《かる》い方《ほう》をもらっていくことにしますよ。」
こう言《い》っておじいさんは、軽《かる》いつづらを背負《せお》わせてもらって、
「じゃあ、さようなら。また来《き》ますよ。」
「お待《ま》ち申《もう》しております。どうか気《き》をつけてお帰《かえ》り下《くだ》さいまし。」
と言《い》って、すずめは門口《かどぐち》までおじいさんを送《おく》って出ました。
三
日が暮《く》れてもおじいさんがなかなかもどらないので、おばあさんは、
「どこへ出かけたのだろう。」
とぶつぶつ言《い》っているところへ、おみやげのつづらを背負《せお》って、おじいさんが帰《かえ》って来《き》ました。
「おじいさん、今《いま》ごろまでどこに何《なに》をしていたんですね。」
「まあ、そんなにおおこりでないよ。今日《きょう》はすずめのお宿《やど》へたずねて行《い》って、たくさんごちそうになったり、すずめ踊《おど》りを見《み》せてもらったりした上に、このとおりりっぱなおみやげをも
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