るなあ。」
とおじいさんは言《い》って、がっかりした顔《かお》をしていました。
二
おじいさんは、すずめが舌《した》を切《き》られてどこへ行ったか心配《しんぱい》でたまりませんので、あくる日は、夜《よ》があけるとさっそく出かけていきました。おじいさんは道々《みちみち》、つえをついて、
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「舌切《したき》りすずめ、
お宿《やど》はどこだ、
チュウ、チュウ、チュウ。」
[#ここで字下げ終わり]
と呼《よ》びながら、あてもなくたずねて歩《ある》きました。野《の》を越《こ》えて、山を越《こ》えて、また野《の》を越《こ》えて、山を越《こ》えて、大きなやぶのある所《ところ》へ出ました。するとやぶの中から、
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「舌切《したき》りすずめ、
お宿《やど》はここよ。
チュウ、チュウ、チュウ。」
[#ここで字下げ終わり]
という声《こえ》が聞《き》こえました。おじいさんは喜《よろこ》んで、声《こえ》のする方《ほう》へ歩《ある》いていきますと、やがてやぶの陰《かげ》にかわいらしい赤《あか》いおうちが見《み》えて、舌《した》を切《き》られたすずめが門《もん》をあけて、お迎《むか》えに出ていました。
「まあ、おじいさん、よくいらっしゃいました。」
「おお、おお、ぶじでいたかい。あんまりお前《まえ》がこいしいので、たずねて来《き》ましたよ。」
「まあ、それはそれは、ありがとうございました。さあ、どうぞこちらへ。」
こう言《い》ってすずめはおじいさんの手《て》をとって、うちの中へ案内《あんない》しました。
すずめはおじいさんの前《まえ》に手《て》をついて、
「おじいさん、だまってだいじなのりをなめて、申《もう》しわけがございませんでした。それをおおこりもなさらずに、ようこそたずねて下《くだ》さいました。」
と言《い》いますと、おじいさんも、
「何《なん》の、わたしがいなかったばかりに、とんだかわいそうなことをしました。でもこうしてまた会《あ》われたので、ほんとうにうれしいよ。」
と言《い》いました。
すずめはきょうだいやお友《とも》だちのすずめを残《のこ》らず集《あつ》めて、おじいさんのすきなものをたくさんごちそうをして、おもしろい歌《うた》に合わせて、みんなですずめ踊《おど》りを踊《おど》って見《み》せました。おじいさん
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