めていました。そこで、人びとは神さまのお声をきくために出かけましたが、カレンは、ひとりかなしく自分のせまいへやにはいっていきました。そのへやは、カレンのベットと一|脚《きゃく》のいすとが、やっとはいるだけの広さしかありませんでした。そこにカレンは、さんび歌の本を持っていすにすわりました。そして信心ぶかい心もちで、それを読んでいますと、風につれて、お寺でひくオルガンの音《ね》が聞こえてきました。カレンは涙でぬれた顔をあげて、
「ああ、神さま、わたくしをお救いくださいまし。」と、いいました。
 そのとき、お日さまはいかにもうららかにかがやきわたりました。そしてカレンがあの晩お寺の戸口のところで見た天使とおなじ天使が、白い着物を着て、カレンの目の前に立ちました。けれどもこんどは鋭い剣のかわりに、ばらの花のいっぱいさいたみごとな緑の枝を持っていました。天使がそれで天井にさわりますと、天井は高く高く上へのぼって行って、さわられたところは、どこものこらず金の星がきらきらかがやきだしました。天使はつぎにぐるりの壁にさわりました。すると壁はだんだん大きく大きくよこにひろがっていきました。そしてカレンの
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