》の神《かみ》に向《む》かって、
「いつぞや約束《やくそく》したとおり、わたしは少女《おとめ》をお嫁《よめ》にもらって、子供《こども》まで出来《でき》ました。だから約束《やくそく》のとおり、あなたの着物《きもの》をぬいで下《くだ》さい。それからごちそうをたんとして下《くだ》さい。」
 といいました。
 けれども兄神《あにがみ》は弟神《おとうとがみ》の幸福《こうふく》をねたましく思《おも》って、さもいまいましそうに、
「そんな約束《やくそく》はした覚《おぼ》えがないよ。」
 といって、まるで着物《きもの》もくれないし、ごちそうもしませんでした。
 弟神《おとうとがみ》はくやしがって、おかあさんの女神《めがみ》の所《ところ》へ行《い》っていいつけました。すると女神《めがみ》はおおこりになって、兄神《あにがみ》に、
「あなたはなぜうそをつくのです。神《かみ》のくせにいやしい人間《にんげん》のするようなうそをつくというのは何事《なにごと》です。」
 としかりました。
 それでも兄神《あにがみ》はやはり約束《やくそく》を果《は》たそうとしませんでした。すると女神《めがみ》は出石川《いずしがわ》の
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