」
といいました。おかあさんも、
「大丈夫《だいじょうぶ》、しっかりお留守居《るすい》をいたしますから、気《き》をつけて、ぶじに早《はや》くお帰《かえ》りなさいまし。」
といいました。
その中で娘《むすめ》はまだ子供《こども》でしたから、ついそこらへ出かけて、じきにおとうさんが帰《かえ》って来《く》るもののように思《おも》って、悲《かな》しそうな顔《かお》もしずに、
「おとうさん、おとなしくお留守番《るすばん》をしますから、おみやげを買《か》ってきて下《くだ》さいな。」
といいました。おとうさんは笑《わら》いながら、
「よしよし。その代《か》わり、おとなしく、おかあさんのいうことを聴《き》くのだよ。」
といいました。
おとうさんが立《た》って行《い》ってしまうと、うちの中は急《きゅう》に寂《さび》しくなりました。はじめの一|日《にち》や二日《ふつか》は、娘《むすめ》もおかあさんのお仕事《しごと》をしているそばでおとなしく遊《あそ》んでおりましたが、三日《みっか》四日《よっか》となると、そろそろおとうさんがこいしくなりました。
「おとうさん、いつお帰《かえ》りになるのでしょう
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