の役人たちも、たれでも横ッ腹をふみにじられたくはないので、そのはんぶんは、いっしょになって、かけまわりました。そこで、世界じゅうがしっていて、御殿にいるひとたちだけがしらない、ふしぎな、さよなきどりのそうさくが、はじまりました。
とうとうおしまいに、役人たちのつかまえたのは、お台所《だいどころ》の下ばたらきのしがないむすめでした。そのむすめは、こういいました、
「まあ、さよなきどりですって、わたしはよくしっておりますわ。ええ、なんていいこえでうたうでしょう。まいばん、わたくしは、びょうきでねている、かわいそうなかあさんのところへ、ごちそうのおあまりを、いただいてもっていくことにしておりますの。かあさんは、湖水《こすい》のふちに、すんでいましてね、そこからわたしがかえってくるとき、くたびれて、林のなかでやすんでいますと、さよなきどりの歌がきこえます。きいているうち、まるでかあさんに、ほおずりしてもらうようなきもちになりましてね、つい涙《なみだ》がでてくるのでございます[#「ございます」は底本では「ごさいます」]。」
「これこれ、女中。」と、侍従長はいいました。「おまえに、お台所でしっか
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