おたずねになりました。「しかもそれがわが大帝国内《だいていこくない》で、これが第一等《だいいっとう》のものだとしている。それをどうして、いままでわたしにいわなかったのであるか。」
「わたくしもまだ、そのようなもののあることは、うけたまわったことがございません。」と、侍従長はいいました。「ついぞまだ、宮中《きゅうちゅう》へすいさんいたしたこともございません。」
「こんばん、さっそく、そのさよなきどりとやらをつれてまいって、わがめんぜんでうたわせてみせよ。」と、皇帝はおっしゃいました。「みすみす、じぶんがもっていて、世界じゅうそれをしっているのに、かんじんのわたしが、しらないではすまされまい。」
「ついぞはや、これまでききおよばないことでございます。」と、侍従長は申しました。「さっそくたずねてみまする。みつけてまいりまする。」
 さて、そうはおこたえ申しあげたものの、どこへいって、それをみつけたものでしょう。侍従長は御殿じゅうの階段《かいだん》を上ったり下《お》りたり、廊下《ろうか》や広間《ひろま》のこらずかけぬけました。でもたれにあってきいても、さよなきどりのはなしなんか、きいたというも
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