きどり献上使《けんじょうし》、というしょうごうをたまわりました。
「いっしょになかしたら、さぞおもしろい二部|合唱《がっしょう》がきけるだろう。」
そこで、ふたつのさよなきどりは、いっしょにうたうことになりました。でも、これはうまくいきませんでした。それは、ほんもののさよなきどりは、かってに、じぶんのふしでうたって行きましたし、さいく物のことりは、ワルツのふしでやったからでした。
「いや、これはさいく物のことりがわるいのではございません。」と、宮内楽師長《くないがくしちょう》がいいました。「どうしてふしはたしかなもので、わたくしどもの流儀《りゅうぎ》にまったくかなっております。」
そこで、こんどは、さいく物のことりだけがうたいました。ほんもののとおなじようにうまくやって、しかもちょいとみたところでは、ほんものよりは、ずっときれいでした。それはまるで腕輪《うでわ》か、胸《むね》にとめるピンのように、ぴかぴかひかっていました。
さいく物のことりは、おなじところを三十三回も、うたいましたが、くたびれたようすもありませんでした。みんなはそれでも、もういちどはじめから、ききなおしたいようで
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