ておきました。
あくる朝《あさ》見《み》ると、麻糸《あさいと》の先《さき》は針《はり》がついたまま戸《と》の鍵穴《かぎあな》を抜《ぬ》けて、外《そと》へ出ていました。そして麻糸《あさいと》が引《ひ》かれるにつれて、糸巻《いとまき》はくるくるとほぐれて、もう部屋《へや》の中にはたった三《み》まわり、輪《わ》になっただけしか、糸《いと》は残《のこ》っていませんでした。
お婿《むこ》さんが戸《と》の鍵穴《かぎあな》から出て行ったことが、これで分《わ》かりましたから、お姫《ひめ》さまはその糸《いと》をたぐりたぐり、どこまでもずんずん行ってみますと、糸《いと》はおしまいに三輪山《みわやま》のお社《やしろ》の中に入《はい》って、そこで止《と》まっておりました。
それではじめてお婿《むこ》さんが大物主命《おおものぬしのみこと》でいらっしゃったことが分《わ》かりました。そして糸《いと》が三輪《みわ》あとに残《のこ》っていたので、その山をも三輪山《みわやま》と呼《よ》ぶようになりました。
底本:「日本の諸国物語」講談社学術文庫、講談社
1983(昭和58)年4月10日第1刷発行
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