《う》まれそうになりました。ところで、そのお婿《むこ》さんははじめから、夜《よる》おそく来《き》ては、夜《よ》の明《あ》けないうちに、いつ帰《かえ》るともなく帰《かえ》ってしまうので、お姫《ひめ》さまのほかには、だれもその顔《かお》を見知《みし》ったものもありませんし、どこのだれだということは、お姫《ひめ》さますら知《し》りませんでした。
二
お姫《ひめ》さまのおとうさまとおかあさまは、ふしぎに思《おも》って、どうかしてそのお婿《むこ》さんの正体《しょうたい》を見届《みとど》けたいと思《おも》いました。そこである日お姫《ひめ》さまに向《む》かって、
「今夜《こんや》お婿《むこ》さんの来《く》る前《まえ》に、部屋《へや》にいっぱい赤土《あかつち》をまいてお置《お》き。それから麻糸《あさいと》を針《はり》にとおしておいて、お婿《むこ》さんの帰《かえ》るとき、そっと着物《きもの》のすそにさしてお置《お》き。」
といいつけました。
お姫《ひめ》さまはその晩《ばん》いいつけられたとおり、大きな麻糸《あさいと》の玉《たま》をお婿《むこ》さんの着物《きもの》のすそに縫《ぬ》いつけ
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