た》ててわたしを射《い》させました。わたしはもう逃《に》げ道《みち》がなくなって、とうとう二人《ふたり》の武士《ぶし》の矢先《やさき》にかかって倒《たお》れました。けれども体《からだ》だけはほろびても、魂《たましい》はほろびずに、この石になって残《のこ》りました。わたしの根《ね》ぶかい悪念《あくねん》は石になってもほろびません。石のそばに寄《よ》るものは、人でも獣《けもの》でも毒《どく》にあたって倒《たお》れました。みんなは殺生石《せっしょうせき》といって、おそれてそばへ寄《よ》るものはありませんでした。それが今夜《こんや》あなたに限《かぎ》って、殺生石《せっしょうせき》のそばに夜《よ》を明《あ》かしながら、何《なん》にも災《わざわ》いのかからないのはふしぎです。これはきっと仏《ほとけ》さまの道《みち》を深《ふか》く信《しん》じていらっしゃる功徳《くどく》に違《ちが》いありません。あなたのような尊《とうと》いお上人《しょうにん》さまにお目《め》にかかったのは、わたしのしあわせでした。どうかあなたのあらたかな法力《ほうりき》で、わたしをお救《すく》いなすって下《くだ》さいませんか。わたし
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