した。
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*バルティック海上の島。島の方言がかわっていた。
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しかしいくらあるいても、参事は橋をみつけることはできませんでした。らんかんらしいものはまるでありませんでした。
「どうもこのへんは実にひどい所だ。」と、参事官はいいました。じぶんのいる時代を、この晩ほどなさけなくおもったことはありませんでした。「まあこのぶんでは、辻馬車をやとうのがいちばんよさそうだ。」と、参事官はおもいました。そういったところで、さて、どこにその辻馬車があるでしょうか。それは一台だってみあたりそうにはありませんでした。
「これではやはり、王立新市場までもどるほうがいいだろう。あそこならたくさん馬車も来ているだろう。そうでもしないと、とてもクリスティアンス ハウンまでかえることなどできそうもない。」
そこで、またもどって、東通のほうへあるきだしました。そしてほとんどそこを通りぬけようとしたときに、たかだかと月がのぼりました。
「おや、なんとおもって足場みたいなものをここに建てたのだ。」
東門をみつけて、参事官はこうさけびました。そのころ東通のはずれに、門があ
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