ふるえ出《だ》してしまいました。
「ああ、ごめんなさい、すぐは困《こま》る。しばらくお待《ま》ち下《くだ》さい。」
大工《だいく》は泣《な》くようにいって、あわててそこを逃《に》げ出《だ》しました。
三
逃《に》げ出《だ》したものの、どうする当《あ》てもないので、今《いま》にも鬼《おに》が追《お》っかけて来《く》るかとはらはらしながら、川の岸《きし》をはなれて山の方《ほう》へどんどん逃《に》げて行《い》きました。
逃《に》げ出《だ》して、山の中をあてもなくうろうろ歩《ある》いていますと、どこか遠《とお》くの林《はやし》の中から、子供《こども》の歌《うた》う声《こえ》がしました。やがてその声《こえ》はだんだん近《ちか》くなって、つい聞《き》くともなしに、耳《みみ》にはいってきたのは、こういう歌《うた》でした。
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鬼六《おにろく》どうした、
橋《はしょ》かけた。
かけたらほうびに、
目玉《めえだま》、早《はよ》もって来《こ》い。
[#ここで字下げ終わり]
この歌《うた》を聞《き》いて、大工《だいく》はほっとしました。そうして生《い》き返《かえ》っ
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