そうに笑《わら》いました。そうして、大きな歯《は》をむき出《だ》したまま、
「ふ、ふ、ふ、お前《まえ》、いくら名人《めいじん》でも、大工《だいく》にゃあこの橋《はし》はかからないぞ。」
といいました。
「じゃあ、だれならかかる。」
「そりゃあこのおれならかかるよ。」
「じゃあ頼《たの》む、お前《まえ》さん後生《ごしょう》だ、代《か》わりにかけておくれ。」
「そりゃあかけてやってもいいが、何《なに》をお礼《れい》にくれる。」
「そりゃあかけてくれればなんでも上《あ》げるよ。」
「じゃあお前《まえ》、その目玉《めだま》をよこせ。」
「なに、目玉《めだま》だ。」
大工《だいく》もこれには少《すこ》し驚《おどろ》きましたが、なにその時《とき》はその時《とき》でどうにかなるだろうと思《おも》って、
「よし、よし、お安《やす》い御用《ごよう》だ。」
といって、承知《しょうち》してしまいました。
二
大工《だいく》はそれなりうちへ帰《かえ》って、ゆっくり一寝入《ひとねい》りして、あくる日また、何気《なにげ》なしに川へ出てみました。すると、川の水《みず》は一向《いっこう》引《ひ》
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