、ふくれ上《あ》がり、ものすごい音《おと》を立《た》ててわき返《かえ》っていました。
「このおそろしい流《なが》れの上に、どうして橋《はし》がかけられよう。」
大工《だいく》は、こう独《ひと》り言《ごと》をいいながら、ただあきれて途方《とほう》にくれて、川の水《みず》をぼんやりながめていました。
すると、どこからか、
「どうした、名人《めいじん》、そこで何《なに》を考《かんが》えている。」
という者《もの》がありました。
大工《だいく》が驚《おどろ》いて、見《み》まわすとたん、水《みず》の上にぶく、ぶく、ぶくと大きな泡《あわ》が立《た》ったと思《おも》うと、おそろしく大きな、鬼《おに》のような顔《かお》がそこにぽっかりあらわれました。
大工《だいく》は、妙《みょう》な、気味《きみ》の悪《わる》いやつが出《で》て来《き》たと思《おも》いながら、わざとへいきで、
「うん、おれか。おれは頼《たの》まれたから、この川に橋《はし》をかけようと思《おも》って考《かんが》えているのだ。」
といいました。
すると鬼《おに》は顔《かお》じゅう口にして、ぎえッ、ぎえッ、ぎえッと、さもおもしろ
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