《む》かって、
「どうだね、坊《ぼう》やは都《みやこ》へ出てお侍《さむらい》にならないかい。」
と言《い》いました。金太郎《きんたろう》は目をくりくりさせて、
「ああ、お侍《さむらい》になれるといいなあ。」
と言《い》いました。
このきこりと見《み》せたのはじつは碓井貞光《うすいのさだみつ》といって、その時分《じぶん》日本一《にほんいち》のえらい大将《たいしょう》で名高《なだか》い源頼光《みなもとのらいこう》の家来《けらい》でした。そして御主人《ごしゅじん》から強《つよ》い侍《さむらい》をさがして来《こ》いという仰《おお》せを受《う》けて、こんな風《ふう》をして日本《にほん》の国中《くにじゅう》をあちこちと歩《ある》きまわっているのでした。
山うばもそう聞《き》くと、たいそう喜《よろこ》んで、
「じつはこの子の亡《な》くなりました父《ちち》も、坂田《さかた》というりっぱな氏《うじ》を持《も》った侍《さむらい》でございました。わけがございましてこのとおり山の中に埋《う》もれておりますものの、よいつてさえあれば、いつか都《みやこ》へ出《だ》して侍《さむらい》にして、家《いえ》の名《
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