した。うさぎや熊《くま》に別《わか》れると、金太郎《きんたろう》は一人《ひとり》で、また身軽《みがる》にひょいひょいと谷《たに》を渡《わた》ったり、崖《がけ》を伝《つた》わったりして、深《ふか》い深《ふか》い山奥《やまおく》の一|軒家《けんや》に入《はい》っていきました。そこいらには白《しろ》い雲《くも》がわき出《だ》していました。
きこりはそのあとからやっと木の根《ね》をよじたり、岩角《いわかど》につかまったりして、ついて行きました。やっとうちの前《まえ》まで来《き》て、きこりが中をのぞきますと、金太郎《きんたろう》はいろりの前《まえ》に座《すわ》って、おかあさんの山うばに、熊《くま》や鹿《しか》とすもうを取《と》った話《はなし》をせっせとしていました。おかあさんもおもしろそうに、にこにこ笑《わら》って聞《き》いていました。その時《とき》きこりは出《だ》しぬけに窓《まど》から首《くび》をぬっと出《だ》して、
「これこれ、坊《ぼう》や。こんどはおじさんとすもうを取《と》ろう。」
と言《い》いながら、のこのこ入《はい》って行《い》きました。そしていきなり金太郎《きんたろう》の前《まえ
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