ま》がかかっていきましたが、片《かた》っぱしからころころ、ころがされてしまいました。
「何《なん》だ。弱虫《よわむし》だなあ。みんないっぺんにかかって来《こ》い。」
 と金太郎《きんたろう》が言《い》いますと、くやしがってうさぎが足《あし》を持《も》つやら猿《さる》が首《くび》に手《て》をかけるやら、大《おお》さわぎになりました。そして鹿《しか》が腰《こし》を押《お》して熊《くま》が胸《むね》に組《く》みついて、みんな総《そう》がかりでうんうんいって、金太郎《きんたろう》を倒《たお》そうとしましたが、どうしても倒《たお》すことができませんでした。金太郎《きんたろう》はおしまいにじれったくなって、からだを一振《ひとふ》りうんと振《ふ》りますと、うさぎも猿《さる》も鹿《しか》も熊《くま》もみんないっぺんにごろごろ、ごろごろ土俵《どひょう》の外《そと》にころげ出《だ》してしまいました。
「ああ、いたい。ああ、いたい。」
 とみんな口々《くちぐち》に言《い》って、腰《こし》をさすったり、肩《かた》をもんだりしていました。金太郎《きんたろう》は、
「さあ、おれにまけてかわいそうだから、みんなに分
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