し》のたもとに立《た》っていました。そしてよさそうな刀《かたな》をさした人が来《く》ると、だしぬけにとび出《だ》して行って奪《うば》いとります。逃《に》げようとしたり、すなおに渡《わた》さなかったりするものは、なぎなたでなぎ倒《たお》しました。
すると、このごろは毎晩《まいばん》五条《ごじょう》の橋《はし》に大坊主《おおぼうず》が出て、人の刀《かたな》をとるという評判《ひょうばん》がぱっと高《たか》くなりました。
坊主《ぼうず》ではない、てんぐだというものもありました。そしてみんなこわがって、日が暮《く》れると五条《ごじょう》の橋《はし》をとおる者《もの》がなくなりました。
ある時《とき》弁慶《べんけい》がとって来《き》た刀《かたな》を出《だ》して数《かぞ》えてみますと、ちょうど九百九十九|本《ほん》ありました。弁慶《べんけい》はよろこんで、
「うまい、うまい、もう一|本《ぽん》で千|本《ぼん》だぞ。おしまいに一ばんいい刀《かたな》を取《と》ってやりたいものだ。」
と独《ひと》り言《ごと》をいいました。そしてその晩《ばん》はわざわざ五条《ごじょう》の天神《てんじん》さまにおまいりをして、
「もう一|本《ぽん》で千|本《ぼん》になります。どうぞ一ばんいい刀《かたな》をお授《さず》け下《くだ》さい。」
といって、それからいつものように、五条《ごじょう》の橋《はし》の下へ行って立《た》っていました。
三
牛若《うしわか》は五条《ごじょう》の橋《はし》の大《おお》どろぼうのうわさを聞《き》くと、
「ふん、それはおもしろい。てんぐでも鬼《おに》でも、そいつを負《ま》かして家来《けらい》にしてやろう。」
と思《おも》いました。
月のいい夏《なつ》の晩《ばん》でした。牛若《うしわか》は腹巻《はらまき》をして、その上に白《しろ》い直垂《ひたたれ》を着《き》ました。そして黄金《こがね》づくりの刀《かたな》をはいて、笛《ふえ》を吹《ふ》きながら、五条《ごじょう》の橋《はし》の方《ほう》へ歩《ある》いて行きました。
橋《はし》の下に立《た》っていた弁慶《べんけい》は、遠《とお》くの方《ほう》から笛《ふえ》の音《ね》が聞《き》こえて来《く》ると、
「来《き》たな。」
と思《おも》って、待《ま》っていました。そのうち笛《ふえ》の音《ね》はだんだん近《ちか》くなって、色《いろ》の白《しろ》い、きれいな稚児《ちご》が歩《ある》いて来《き》ました。弁慶《べんけい》は、
「なんだ、子供《こども》か。」
とがっかりしましたが、そのはいている太刀《たち》に気《き》がつくと、
「おや、これは、」
と思《おも》いました。
弁慶《べんけい》は橋《はし》のまん中に飛《と》び出《だ》して行って、牛若《うしわか》の行く道《みち》に立《た》ちはだかりました。牛若《うしわか》は笛《ふえ》を吹《ふ》きやめて、
「じゃまだ。どかないか。」
といいました。弁慶《べんけい》は笑《わら》って、
「その太刀《たち》をわたせ。どいてやろう。」
といいました。牛若《うしわか》は心《こころ》の中で、
「こいつが太刀《たち》どろぼうだな。よしよし、ひとつからかってやれ。」
と思《おも》いました。
「ほしけりゃ、やってもいいが、ただではやられないよ。」
牛若《うしわか》はこういって、きっと弁慶《べんけい》の顔《かお》を見《み》つめました。
弁慶《べんけい》はいら立《だ》って、
「どうしたらよこす。」
とこわい顔《かお》をしました。
「力《ちから》ずくでとってみろ。」
と牛若《うしわか》がいいました。弁慶《べんけい》はまっ赤《か》になって、
「なんだと。」
といいながら、いきなりなぎなたで横《よこ》なぐりに切《き》りつけました。すると牛若《うしわか》はとうに二三|間《げん》後《あと》に飛《と》びのいていました。弁慶《べんけい》は少《すこ》しおどろいて、また切《き》ってかかりました。牛若《うしわか》はひょいと橋《はし》の欄干《らんかん》にとび上《あ》がって、腰《こし》にさした扇《おうぎ》をとって、弁慶《べんけい》の眉間《みけん》をめがけて打《う》ちつけました。ふいを打《う》たれて弁慶《べんけい》は面《めん》くらったはずみに、なぎなたを欄干《らんかん》に突《つ》き立《た》てました。牛若《うしわか》はその間《ま》にすばやく弁慶《べんけい》の後《うし》ろに下《お》りてしまいました。そして弁慶《べんけい》がなぎなたを抜《ぬ》こうとあせっている間《ま》に、後《うし》ろからどんとひどくつきとばしました。弁慶《べんけい》はそのままとんとんと五六|間《けん》飛《と》んで行って、前《まえ》へのめりました。牛若《うしわか》はすぐとその上に馬乗《うまの》りに乗《の》って、
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