ろ[#「ぼろ」に傍点]を、着て行かなければならないでしょうか。」
 妖女はそこで、ほんのわずか、つえの先で、サンドリヨンのからだにさわったとおもうと、みるみる、つぎはぎだらけの着物は、宝石《ほうせき》をちりばめた金と銀の着物にかわってしまいました。それがすむと、妖女はサンドリヨンに、それはそれは美しいリスの皮の上《うわ》ぐつ(ガラスの上ぐつだともいいます。)を、一そくくれました。
 こうして、のこらずしたくができあがって、いよいよサンドリヨンが馬車にのろうとしたとき、妖女《ようじょ》はあらためて、サンドリヨンにむかって、なにはおいても、夜なか十二時すぎまで、ぶとう会にいてはならないと、きびしくいいわたしました。十二時から一分でもおくれると、馬車はまたかぼちゃになるし、馬は小ねずみになるし、御者《ぎょしゃ》は大ねずみになるし、べっとうはとかげになるし、着ている着物も、もとのとおりのぼろ[#「ぼろ」に傍点]になるのだから、といってきかせました。
 サンドリヨンは、妖女に、けっして夜なかすぎまで、ぶとう会にはいませんという、かたいやくそくをしました。そうして、もうはち切れそうなうれしさを、お
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