ぐつを片足落しました。それを王子は大事にしまっておきました。サンドリヨンは、うちにかえりはかえりましたが、すっかり息を切らしてしまいました。もう馬車も、べっとうもなくて、また、いつもの古着のぼろ[#「ぼろ」に傍点]にくるまったなり、ただ片足だけはいてかえった、金の上ぐつを持っていました。
さて、サンドリヨンが出て行ったあとで、王様のお城の番小屋へ、おたずねがありました。
「お姫《ひめ》さまが、ひとり、門を出て行くところを見なかったか。」
ところが、番兵の返事は、
「はい、見たのはただひとり、ひどくみすぼらしいなりをした若いむすめでした。それは貴婦人《きふじん》どころか、ただのいなかむすめとしか、おもわれないふうをしていました。」というのでした。
さて、ふたりのきょうだいが、ぶとう会からかえってくると、サンドリヨンは、こういって聞きました。
「たんとおもしろいことがありましたか。きれいなお姫さまは、きょうも来ましたか。」
ふたりがいうには、
「ああ、けれども、その人ったら、十二時を打つといっしょに、あわてて逃げだしたよ。あんまりあわてたものだから、金の上《うわ》ぐつを、片足落して
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