ど》をたどって下《お》りて行きますと、それはこんな寂《さび》しい谷《たに》あいに似《に》もつかない十六七のかわいらしい少女《おとめ》が、谷川《たにがわ》で着物《きもの》を洗《あら》っているのでした。少女《おとめ》は保名《やすな》の姿《すがた》を見《み》るとびっくりして、危《あや》うく踏《ふ》まえていた岩《いわ》を踏《ふ》みはずしそうにしました。それから保名《やすな》の血《ち》だらけになった手足《てあし》と、ぼろぼろに裂《さ》けた着物《きもの》と、それに何《なに》よりも死人《しにん》のように青《あお》ざめた顔《かお》を見《み》ると、思《おも》わずあっとさけび声《ごえ》をたてました。保名《やすな》は気《き》の毒《どく》そうに、
「驚《おどろ》いてはいけません。わたしはけっして怪《あや》しいものではありません。大ぜいの悪者《わるもの》に追《お》われて、こんなにけがをしたのです。どうぞ水《みず》を一|杯《ぱい》飲《の》ませて下《くだ》さい。のどが渇《かわ》いて、苦《くる》しくってたまりません。」
といいました。
娘《むすめ》はそう聞《き》くと大《たい》そう気《き》の毒《どく》がって、谷川《
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