ていました。

     三

 しばらくすると、おじいさんとおばあさんは帰《かえ》って来《き》ましたが、なんにも知《し》らないものですから、
「瓜子姫子《うりこひめこ》、よくお留守番《るすばん》をしていたね。さぞさびしかったろう。」
 といって、頭《あたま》をさすってやりますと、あまんじゃくは、
「ああ、ああ。」
 といいながら、舌《した》をそっと出《だ》しました。
 するとおもての方《ほう》が、急《きゅう》にがやがやそうぞうしくなって、りっぱななりをしたお侍《さむらい》が大《おお》ぜい、ぴかぴかぬり立《た》てた、きれいなおかごをかついでやって来《き》て、おじいさんとおばあさんのうちの前《まえ》にとまりました。おじいさんとおばあさんは、何事《なにごと》がはじまったのかと思《おも》って、びくびくしていますと、お侍《さむらい》はその時《とき》、おじいさんとおばあさんに向《む》かって、
「お前《まえ》の娘《むすめ》は大《たい》そう美《うつく》しい織物《おりもの》を織《お》るという評判《ひょうばん》だ。お城《しろ》の殿《との》さまと奥方《おくがた》が、お前《まえ》の娘《むすめ》の機《はた》を
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