た影《かげ》を見ると、髪《かみ》もひげも、まっしろな、かわいいおじいさんになっていました。
浦島はからになった箱《はこ》のなかをのぞいて、
「なるほど、乙姫《おとひめ》さまが、人間のいちばんだいじなたからを入れておくとおっしゃったあれは、人間の寿命《じゅみょう》だったのだな」
と、ざんねんそうにつぶやきました。
春の海はどこまでも遠《とお》くかすんでいました。どこからかいい声で舟うたをうたうのが、またきこえてきました。
浦島は、ぼんやりとむかしのことをおもい出していました。
底本:「むかし むかし あるところに」童話屋
1996(平成8)年6月24日初版発行
1996(平成8)年7月10日第2刷発行
底本の親本:「日本童話宝玉集(上中下版)」童話春秋社
1948(昭和23)〜1949(昭和24)年発行
入力:鈴木厚司
校正:林 幸雄
2001年12月19日公開
2002年1月24日修正
青空文庫作成ファイル:
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