うじゃうじゃ、きたないものが出てきて、うす[#「うす」に傍点]にあふれて、そとにこぼれ出して、やがて、台所《だいどころ》いっぱい、きたないものだらけになりました。
 欲《よく》ばりおじいさんは、またかんしゃくをおこして、うす[#「うす」に傍点]をたたきこわして、薪《まき》にしてもしてしまいました。
 正直《しょうじき》おじいさんは、うす[#「うす」に傍点]を返してもらいに行きますと、灰になっていましたから、びっくりしました。でも、もしてしまったものはしかたがありませんから、がっかりしながら、ざるのなかに、のこった灰をかきあつめて、しおしおうちへ帰りました。
「おばあさん、白《しろ》のまつの木が、灰になってしまったよ」
 こういっておじいさんは、お庭のすみの白のお墓《はか》のところまで、灰をかかえて行ってまきますと、どこからか、すうすうあたたかい風が吹いてきて、ぱっと、灰をお庭いっぱいに吹きちらしました。するとどうでしょう、そこらに枯れ木のまま立っていたうめの木や、さくらの木が、灰をかぶると、みるみるそれが花になって、よそはまだ冬のさなかなのに、おじいさんのお庭ばかりは、すっかり春げしき
前へ 次へ
全8ページ中5ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
楠山 正雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング