そくしておく。ただたのむことは頭をぶたないでくれたまえ。これもやくそくしておいてもらわなければならない。なぜならぼくの頭はガロフォリがひどくぶってから、すっかりやわらかくなっているのだ」
わたしはかわいそうなマチアが、そんなことを言うのを聞くと、声を上げて泣《な》きだしたくなった。どうしてわたしはかれを連《つ》れて行くことをこばむことができよう。腹《はら》が減《へ》って死ぬというのか。でも、わたしといっしょでも、やはり腹が減って死ぬかもしれない場合がある――わたしはそうかれに言ったが、かれは聞き入れようともしなかった。
「ううん、ううん」とかれは言った。「二人いれば飢《う》え死《じ》にはしない。一人が一人を助けるからね。持っている者が持っていない者にやれるのだ」
わたしはもうちゅうちょしなかった。わたしがすこしでも持っていれば、わたしはかれを助けなければならない。
「うん、よし、それでわかった」とわたしは言った。
そう言うと、かれはわたしの手をつかんで、心から感謝《かんしゃ》のキッスをした。
「ぼくといっしょに来たまえ」とわたしは言った。「家来ではなく、仲間《なかま》になろう」
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