ガッソーの曲馬団《きょくばだん》へ売った。前金で金をはらってもらったのだ。きみはガッソーの曲馬を知っているかい。知らない。うん、それはたいした曲馬団ではないけれど、やはり曲馬は曲馬さ。そこでは子どもを、かたわの子どもを使うのだ。それでガロフォリがぼくをガッソーへ売ったのだ。ぼくはこのまえの月曜までそこにいたが、ぼくの頭がはこの中にはいるには大きすぎるというので、追い出された。曲馬団《きょくばだん》を出るとぼくはガロフォリのうちへもどったが、うちはすっかり閉《し》まっていた。近所の人に聞いて様子がすっかりわかった。ガロフォリが刑務所《けいむしょ》へ行ってしまうと、ぼくはどこへ行っていいか、わからない」
「それにぼくは金を持たない」とかれはつけ加《くわ》えて言った。「ぼくはきのうから一きれのパンも食べない」
わたしも金持ちではなかったけれど、気のどくなマチアにやるだけのものはあった。わたしがツールーズへんをいまのマチアのように飢《う》えてうろうろしていたじぶん、一きれのパンでもくれる人があったら、わたしはどんなにその人の幸福をいのったであろう。
「ぼくが帰って来るまで、ここに待っておいで
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