アの中へ、おそろしいドアの中へ閉《し》めこまれたが最後《さいご》、二度と出されることがないように思われた。
刑務所《けいむしょ》から出て来ることは容易《ようい》でないとわたしは考えていた。しかしそこへはいるのも容易でないことを知らなかった。さんざんひどい目に会って、わたしはそれを知った。
でも力も落とさず、それから引っ返してしまおうとも思わずに待っていたおかげで、わたしはやっと面会を許《ゆる》されることになった。かねて思っていたのとちがい、わたしは格子《こうし》もさくもないそまつな応接室《おうせつしつ》に通された。お父さんは出て来た。でもくさりなどに結《ゆ》わえられてはいなかった。
「ああ、ルミや、わたしはおまえを待っていた」と、わたしが面会所にはいるとかれは言った。
「わたしは、カトリーヌおばさんがおまえをいっしょに連《つ》れて来なかったので、こごとを言ってやったよ」
わたしはこのことばを聞くと、朝からしょげていたことも忘《わす》れて、すっかりうれしくなった。
「カトリーヌおばさんは、ぼくをいっしょに連《つ》れて来ようとしなかったのです」
わたしはうったえるように言った。
「
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